五月、生活

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いくら就職活動をしているとはいえ無職は基本的に暇なので毎日夜に人のいなくなった大須をぶらぶら徘徊している。

深夜なのでそのあたりにいる人間も妖怪みたいなのが多く、路上でSEKIROのモブみたいなおっさんに金をせびられた。交通費がないらしい。交番に行け。

大須は混沌としていて散歩するにはベストなところだ。ハンチョウの漫画で言われている通りおしゃれなカフェの隣に射撃場があったりする。(今はもうない)

一時間もあれば一通り回れるくらいの広さであるのも丁度いい。程よく狭くて、バリエーションが豊か。散歩道とはそうあるべきだ。

 

朝起きて、飯を作ったり本を読んだり散歩をするとそれだけで一日が終わる。人間の生活に本来労働が入り込む余地など存在しない。無職であり続けられるのならそうすべきだし、そうしたかったと心の底から思う。恐らく千年後には無職であることが基本的人権の一つになっているだろう。

来月から関東で労働が始まる。まあそれはそれでいいのかもしれない。

 

絲山秋子「海の仙人」を読む

 昔から感想文というものがかなり苦手だった。自分の考えたことや極めて個人的な感傷を外に出力する回路がおれの脳にはなかった。今でもそれは変わらないが、最近になって読んだ本の内容を忘れることが続いてるのでこれは良くないと思い、感想をつけることにした。

海の仙人 (新潮文庫)

海の仙人 (新潮文庫)

 

 宝くじに当たった河野は仕事をやめ、敦賀に引っ越し静かな生活をしている。そこに謎の男、ファンタジーが現れて河野のもとに居候として住むようになる。というところから始まる。

あっけらかんとした性格の同僚の片桐を始めとして登場人物が魅力的で、全体的に漂うひんやりとした空気感が心地よかった。不穏なことがいくつも起こるが、不思議と重苦しさは感じなかった。

 

結局ファンタジーが何者だったのかは最後まで明かされない。正体が何であるかを考えるのは野暮かもしれないが、孤独の神であるというのが一番しっくりくる。

ファンタジーはただそこに存在するだけの神で願いを叶えてくれるわけでもなければ、問題解決の助けとなることもない。

孤独とは他人で埋めるものではなく、自分独りで対処するべき最低限の荷物である。

それに向き合うことを決めた人間の前に現れるのが孤独の神なのだ。

 

久しぶりに爽やかな読後感のあるいい小説を読むことができた。

 

雨、不眠

 

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夜中まで眠れずに結局起きるのは昼過ぎになった。

今のアパートは高層階にあって、今が曇りなのか、はたまた降っているのかがわかりにくい。シーシャを作るためにベランダに出てようやく今日は雨が降っているということに気が付いた。

ここは周りの物件よりも一回り安かった。不動産屋は何も言わなかったが、というか重説すら受けてない気がするが、前の住人の借金督促状が頻繁に届いたり、ドアに殴った後があったりしたので恐らくはそういうことなのだろう。

今日は夜になったら面接のために夜行バスに乗って横浜に行くことになっている。

GWで高くなったバス料金を見てうんざりした。

4/27

研修をバックレて先の見通しのないまま新居のアパートに逃げ込んできて一か月が経った。貯金が尽きる前に新しい職を探さなければならないが、新卒の就活がうまくいかなかった人間が既卒の就活でスムーズに職を見つけられるわけもなく、今も就活を続けている。そもそも最初から働きたくなんてなかったが、働かないことで働くよりもはるかに大きい苦痛が待ってるのだから仕方がない。

 

やりたいことは何か、と何十回も問われた。

エントリーシートで、キャリアセンターの相談員に、あるいは面接で重役っぽい面接官に。

「そんなものはない」というのが唯一にして絶対の答えだった。

当然自分でも何度も考えた。大学で新しくサークルに入ってみたり、友達からの誘いには興味がなくても乗ってみたり、新しく趣味を始めたり、果てには脱法幻覚剤をやりながらの瞑想まで試してみた。

何をやっても虚しさが勝った。精神が好転する兆しは一切見えず、今日で人生が終わっても構わないと毎日思っている。

「三十代になれば色々楽になる」という話を聞いたことがある。今の自分にある希望はそれだけ、それだけだ。

 

 

 

どこまでも愚かな自分について

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新卒研修で数週間泊まり込みの現場作業をやることになった。

研修自体はそこまでキツイものではなく、同僚との軋轢があるわけでもないが、作業服を着てヘルメットをかぶって日がな泥にまみれることはおれの星の数ほどあるやりたくないことの中でも上位にくるものである。

お前の選択は間違いだったし、人生に対してあまりにも怠惰だし、その報いを当然受けるべきだと何日もかけてじっくりと教え込まれているような気分になった。

自分は選択することが何よりも苦手だし、望みを現実的なものとして言語化する力も持っていない。そして何より自分の人生に対して本気になることができないのである。

自ら選びとり、獲得することが求められる就活というイベントに対しておれは絶望的に相性が悪かった。

人生の重要な岐路でそういう権利を主張できない人間にはもっとも望ましくない結果が与えられる。

誰かのせいにして責任を逃れたいが、時流だとか、世間だとか、周りの人間が悪かったわけではない。

他でもないこのおれがどこまでも怠惰で馬鹿で愚鈍だったことが原因なのだ。

 

明日も朝から研修があるので眠剤を飲んで今日はもう寝ることにする。

 

 

12/15

予報通り朝から雪が降った

隣の屋根に薄く雪が積もってるのを確認してもう一度昼まで寝る

本当なら早起きして散歩に行きたかったが入眠の遅れと寒さが重なってどうにも起きてられなかった

きちんと夜に寝られるようになりたい